フッ素はむし歯の天敵です!
「フッ素」は、化学的に合成されたものではなく、自然界に広く分布している歯を強くする自然元素の一つです。地球上の全ての動物や植物にも含まれており、わたしたちが毎日飲む水や、海産物、肉、野菜、果物、お茶など、ほとんどの食品にも微量ながら含まれています。
もちろん、これらを摂取する私たちの歯や骨、あるいは血液中にもフッ素は存在しています。歯質強化効果が最も高いことから世界各国でむし歯予防に利用されています。
《 推奨専門機関 》
・WHO(世界保健機構)
・FDI(国際歯科連盟)
・日本歯科医師会
・日本口腔衛生学会
・子供の歯を守る会
など
フッ素には、
という、3つのむし歯予防作用があります。
フッ化物の応用は、以下の方に特に有効といわれています。
・4歳から15歳くらいまで
生えたての歯は、表面のエナメル質といわれる部分が成熟していないため、この時期は、フッ素による虫歯予防効果が特に期待できます。
・矯正治療中の患者さんのむし歯
・成人の歯と歯の間に出来る虫歯
・高齢者の根面にできる虫歯
フッ素は、あくまでもむし歯の予防と初期のむし歯の進行抑制に対してのみ有効です。すでに穴があいていたり、痛みが出てきているような進行したむし歯がある場合には、できるだけ早く歯科医院を受診することをおすすめします。
フッ素の種類や濃度によって、むし歯予防効果は違います。
永久歯に対するむし歯予防効果
1)フッ素洗口
高いむし歯予防効果が認められた方法で、1日1回、歯磨き後に低濃度(0.05%:250ppm)のフッ化物(「ミラノール®」)で約1分間うがいをする方法です。
効果的なフッ素応用のポイントは、「低濃度」のフッ化ナトリウムを「頻回数」、「長期間」応用することです。この概念に最も合った方法が「フッ素洗口」です。費用も年間約1000円と経済的で、使用方法も簡単であることから、小さいお子さんから大人まで幅広い年齢層の方に長期にわたりお使いいただけます。
当クリニックでもこの「フッ素洗口」をおすすめしております。
また、まだぶくぶくうがいができないお子さん(1〜3歳頃)には、低濃度のフッ化物スプレー(0.02%:100ppm:「レノビーゴ®」)をご用意しています。
寝かせ歯磨き後、歯に直接スプレーするか、歯ブラシに噴霧し、歯の隅々までフッ素が行き渡るよう磨くだけです。ただし、フッ素洗口ほどの予防効果はのぞめません。
2)フッ化物歯面塗布
歯科医院で高濃度(2%:9000ppm)のフッ化物(「フローデン®」)を直接歯に塗布する方法です。十分な効果を得るためには、歯科医院で年3〜4回行う必要があります。
3) フッ素入り歯磨き剤
現在市販されている歯磨き剤の半分以上にフッ素が配合されており、知らず知らずのうちに実行されている可能性もありますが、市販のものはむし歯予防効果が低いので、歯科医院用のものを購入されたほうがいいでしょう。
フッ素は特別なものではなく、毎日の食事を通して私たちの身体に摂取され、WHOなどの専門機関では必須栄養素の一つとされています。
しかし、「過ぎたるは及ばざるが如し」で、摂取しすぎれば有害です。むし歯予防のために利用する通常量を歯科医師の指示通りにお使いいただけば問題はありませんので、ご安心ください。
フッ素の安全性については、あくまでも過量摂取が問題となるので、決められた使用方法を守っていただければ、まず問題はありません。しかし、過量に摂取すると害(中毒)を生じます。
慢性中毒
長年にわたって飲料水などから過量のフッ素を摂取した時に生ずるもので、歯牙フッ素症(班状歯)と骨フッ素症(骨硬化症)の2つがあります。
歯牙フッ素症(班状歯)は、適量の2〜3倍以上のフッ素を、あごの骨の中で歯ができ始める時期から長年にわたり継続して摂取した場合に起こるもので、歯の表面に白班や縞模様が現れたものをいます。 また、骨フッ素症(骨硬化症)は、さらに多くのフッ素、すなわち適量の約10倍以上を数十年間摂取した場合に起こることがあります 。
急性中毒
一度に多量のフッ素を摂取した時に生ずるもので、吐き気、嘔吐、腹部不快感などの症状を示します。応急処置として牛乳を飲ませ、医師の診察を受けてください。
フッ素の急性中毒量は、体重1Kg当たりフッ素として約2mgです。
フッ化物洗口(「ミラノール®」)の1回量に含まれるフッ素は約2.25mgです。体重30kgのお子さんが急性症状を起こす量は、急性中毒量2mg×30=60mgとなり、これは「ミラノール」約27回分を一度に飲んだのと同じ計算です。
フッ素の安全性・有効性は、WHOをはじめ、世界各国の専門機関が認めています。
日本でも、平成15年には、4歳から14歳までの子供のフッ素洗口の実施を推奨する、「フッ化物推奨ガイドライン」が、厚生省から各都道府県、市区町村に周知されました。「人間が生きている通常の条件で健康および最良の条件を保持するのに普通に必要とされる<有益>な元素」であると考えれば、フッ素の位置づけと有用性が理解しやすくなると考えます。
<参考文献>
『フッ化物ではじめるむし歯予防』
日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会編(医歯薬出版株式会社)